続々々々々々々々々々々々々々々々々・智恵子(小)
はじめに
この物語はある作家(家族の強い要望により匿名)の智恵子(小)との深い愛憎の様子を作家本人が記した日記である。
作家自身は発表の場を求めていたが、家族の強い反対により、商業誌での発表は見送られた。そのため千年より作家の匿名、また作家を特定できるような個所の非公開を条件としてその一部をSAKANAFISHにて公表しつづけているものである。
4月18日
S社の矢橋君来訪。いやに上機嫌だと思って理由を聞くが、言葉を濁す。鎌倉屋の銅鑼焼きを置いて帰る。帰り際に来月から担当が変わると言い置いて走り出す矢橋君。智恵子(小)、明かりをつけたり消したり。
4月29日
昭和節。「4」と大きく書かれた差出人不明の葉書が届く。手がかりは品川局の消印のみ。智恵子(小)、今日も付けたり消したり。
4月30日
「3」と大きく書かれた差出人不明の葉書が届く。手がかりはやはり品川局の消印のみ。不審千万。智恵子(小)、今日も付けたり消したり。
5月1日
本日も「2」と大きく書かれた差出人不明の葉書が届く。奇怪に思っていると、大きな「0」が迫ってくる。スーツを着た男だが、手にした葉書を見るなり帰って行った。智恵子(小)、今日はおとなしい。
5月2日
本日は葉書が届かず。また「0」が迫ってくる。懐から双眼鏡を出してこちらを見るとうなだれて戻っていく。
5月3日
憲法節。「1」の葉書が届く。不審千万。しかし何事も起こらず。暑気が強く、水羊羹。
5月4日
昼頃散歩。夕刻「抱月」で素麺。季節感というものが日本から失われかけて久しいが、私の体からも失われつつあるのだろうか。智恵子(小)、電話線を繋ぐ工事。
5月5日
小児節。終日執筆。智恵子(小)、じっと日記を見ている。
5月12日
ここしばらく日記帳が見つからなかったが、机の上に置かれていた。奇々怪々。夕刻スーツの男がやってくる。S社の矢橋君の後任、柱崖という。珍しい姓。どこかで見たような顔だと思うが、思い出せず。明日また来るという。
5月13日
早暁、柱崖来訪。なにやら長い話を一生懸命しているが、よく覚えておらず。ただなにやらプロデュースだの、メディアミックスだのという言葉が連発されていた。明日また来るという。智恵子(小)、ノートパソコンを購入。いつの間に。
5月14日
柱崖、カメラマンと助手と白い板を持った男を連れてくる。なにやら写真を撮りまくられ閉口。仕事にならず。追い返そうとするも、その瞬間すら写真に撮られている。明日もまた来るという。智恵子(小)、写メールで撮る。
5月15日
柱崖、カメラマンと巻き尺を持っている女を連れてくる。写真の合間に採寸をされ、閉口。仕事にならず。追い返そうとするも、巻き尺に絡め取られる。智恵子(小)、なにやら虎を食う鞄の話をするが意味不明。
5月16日
柱崖、水着を持って着ろという。このような婦女子が着るようなものなど着られるはずもなく、閉口。追い返そうとするも、カメラマンの巧みな話術により、すでに着せられている。智恵子(小)、柱崖となにやらブログ本がどうのこうのと話している。
5月17日
昼間はわりと暑いが、夜になると冷え込む。水着のままでいたら風邪を引いたようだ。しかしこのようなことで撮影を休んではいられない。私もプロフェッショナルなのだ。今日はなにやらひらひらとした衣装を着せられる。不思議なものだ。智恵子(小)、私に寿司を奢るという。銀座久兵衞。
5月18日
本日は握手会だという。今までも作家活動のかたわら様々なファンに出会ってきたが、こんなに手の湿ったファン達に囲まれるのは初めてだ。しかし、ファンは大事にしなくてはならない。ファン達に支えられてこその私なのだ。
5月24日
来月はサイパン!
ハワイは行ったことあるけどぉー、ぁたC、☆サイパン☆はじめてっ!
いっぱい写真撮ってくるからぁー、
みんなっ、★た★の★し★み★にっ!
しておくのだぞぉー☆☆☆☆☆
5月25日
今日は☆☆テレビ☆☆に出まーす!
うまくしゃべれるかどうかシンパイ(泣)…だけどっ、
さんまさんや紳助さんに気に入られるようにガンバルから☆オウエン☆してねっ!☆☆
5月28日
智恵子(小)、炎上