続々々々々々々々々々々々々々々々々々・智恵子(小)
はじめに
この物語はある作家(家族の強い要望により匿名)の智恵子(小)との深い愛憎の様子を作家本人が記した日記である。
作家自身は発表の場を求めていたが、家族の強い反対により、商業誌での発表は見送られた。そのため千年より作家の匿名、また作家を特定できるような個所の非公開を条件としてその一部をSAKANAFISHにて公表しつづけているものである。
10月21日
「玻璃菊」の取材のために巴里。24年ぶりであるが、街の空気は変わらず。「オテル・モンマルトル」に投宿。デュピュイから「シャトー・トロタノワ」が送られている。上質のヴォルドーに透かして見る巴里の夜。
10月22日
終日ルーヴル。古き良き巴里をさりげなく現代の技術が守っている。変わらぬようで変わるのが巴里である。夕刻、ラヴァル氏と会食。鴨のジビエが絶品。
10月23日
ひどく冷え込む。なぜか。巴里は内陸であり、緯度も高い。日本より冬の訪れが早いためである。しかし、巴里という街は、なぜこのように私を引きつけるのか。答えは出ない。
10月24日
ポンピドゥーセンター。巴里の伝統的な風景からは異質とも思える。このような建築すら許容する、巴里の市民性とは一体何なのであろうか。
10月25日
エッフェル塔の側を通りがかる、「問題」ドンギャッ「エッフェル塔は、いったいどうして建設されたのでしょう?」答えは出ない。
10月26日
昨日から不思議な声が響く。「問題」ドンギャッ「毎年、11月第一木曜日に解禁される、ボジョレー地方で作られた新酒の名前は何でしょう」。答えは出ない。
10月28日
終日執筆。しかし不思議な声が鳴りやまない。「問題」ドンギャッ「あなたが現在使用している、発売された当時には『早川式繰出鉛筆』という名前だった、筆記用具とは何でしょう?」答えは出ない。深夜、芯を買いに行くがコンビニエンスストアーが見つからず。
10月29日
モンマルトルのテルトル広場で似顔絵を描いてもらう。「問題」ドンギャッ「一般に、フジテレビ系列のものまね番組の審査員として知られる、本名を高閑者順という、似顔絵を得意とするイラストレーターは『針○○』?」答えは出ない。
10月30日
終日執筆。何時問題が出るか判らないので酷く草臥れる。「問題」ドンギャッ「高い栄養価を持ち、森のバターと呼ばれる、クスノキ科ワニナシ属に属する、アボガドと誤って発音されることもある植物は一体何?」答えは出ない。しかしいったいどこから問題が聞こえてくるのだ。これがパリの空気か。
11月1日
「問題」ドンギャッ「年賀状のシーズンが近づいていますが、年賀状に書かれる『おもち…』で始まる言葉は何?」オモチャは地元の商店街で買おうね。ブー。頭頂部に金盥が直撃。パリの風格が漂う金盥である。
11月2日
「問題」ドンギャッ「一説に、後小松天皇の子とも言われる、頓知話で有名な室町時代の禅僧の名は」一休宗純「ですが、NSC・吉本総合芸能学院で陣内智則・中川家・ケンドーコバヤシ・村越周司・ハリウッドザコシショウらと同期であった『一級』で始まるコンビの名は?」一級河川仁淀川。ブー。熱い湯に突入。水温は52度。
11月3日
「問題」ドンギャッ「フランスの国名をとって名付けられた、固く長いパンは何という?」引っかけかも知れない。終日、マザラン図書館で調査。時折、針のついた機関車から風船を守る。
11月4日
アカデミー・フランセーズ会員のジャン・ゴブレ博士と歓談。問題の件で終日検討を繰り広げる。ゴブレ博士はJ−POPから演歌問題まで幅広い守備範囲を持つ、イントロ問題の名手だ。
11月5日
終日ホテルの一室。パンを買い込み、部屋中に飾る。こうしてそのものと向き合うことによって、答えを導き出す。
11月6日
終日座禅。蝋燭の炎の揺らめきに映えるパンが美しい。
11月7日
終日座禅。蝋燭の炎で焼いたパンは焦げ臭い。
11月8日
この数日、頭の中でモヤモヤとしていたものが纏まりつつある。もう少しだ。もう少し。
11月9日
ドイツパン!ブー。嗚呼バター魔人が部屋中のパンにバターを。