続々々々々々々々々々々々々々々々々々々々・智恵子(小)
はじめに
この物語はある作家(家族の強い要望により匿名)の智恵子(小)との深い愛憎の様子を作家本人が記した日記である。
作家自身は発表の場を求めていたが、家族の強い反対により、商業誌での発表は見送られた。そのため千年より作家の匿名、また作家を特定できるような個所の非公開を条件としてその一部をSAKANAFISHにて公表しつづけているものである。
6月15日
梅雨入り。未だ日本に四季が残っているという安堵と、肌に纏わり付く、不快感。篠突く雨を見ながら、縁側で梅酒を飲む。肴は茄子浅漬。
6月16日
本日も雨。終日縁側で執筆。原稿が湿気を吸い、書辛い。智恵子(小)が沖縄料理の材料を買うと言って外出。
6月17日
本日も雨。終日縁側で執筆。庭に蝸牛。原稿の進みも遅遅として、蝸牛の歩み。智恵子(小)が仏壇屋に行くと言って外出。
6月18日
本日も雨。終日縁側で執筆。綻ぶ紫陽花。智恵子(小)がペンキ屋に行くと言って外出。
6月19日
本日も雨。終日縁側で執筆。庭に雨蛙。智恵子(小)が黒魔術屋に行くと言って外出。
6月20日
本日も雨。終日縁側で執筆。庭に鮒と鯉。鯉の洗いと鯉濃、鮒寿司で一杯やるのもよい。家の中からは何やら智恵子(小)の声が聞こえてくる。
6月21日
本日も雨。終日縁側で執筆。蒸し暑いが、足が冷えて心地がよい。家の中からは何か香のような香りがする。
6月22日
本日も雨。終日縁側で執筆。時折息苦しくなり、原稿の文字がにじんで見える。やや疲れているのかも知れない。
6月23日
ぶくぶくぶくぶく。ぶくぶくぶくぶく、ぶくぶくぶくぶく。
6月24日
偶々通りかかった未来海豚により、水中でも呼吸する術を身につけた。有難う海豚。そういえばもう10日も家の中に入っていない気がする。智恵子(小)は大丈夫だろうか。明日入ろう。原稿は水につかって全て白紙に。乾燥させて使うほか無い。
6月25日
意を決して障子を開けようとするが、水圧がかかり開けられない。一時諦めて海草を喰らう。
6月26日
海葡萄を食べて力がついた。障子を開けるが、何やら目に見えない壁に阻まれ進めず。一時諦めて海草を喰らう。
6月27日
水雲を食べて妖力がついた。目に見えない壁を抜けるとそこには水がなく空気が。がほがほがほうがほう。
6月28日
偶然通りかかった外法蛙によって、肺呼吸の仕方を思い出す。様々な魔物が襲いかかるが、文士の敵ではない。ペン、覇権よりも強し。
6月29日
応接間の前にたどり着くと、何か巨大な魔力を感じる。いよいよ決戦の時か。利尻昆布を食べて英気を養う。
6月30日
扉を開けると、巨大な魔法陣に豚の頭、立ち並ぶ蝋燭。智恵子(小)が雨の魔神「テイキアーツ」を呼び出したのか!しかし怯んではいられず。
6月30日
ペンと魔法、雨と原稿用紙の激しい鍔迫り合い。果たして人類に平穏は取り戻せるのか。
7月1日
藪医師橘来訪。特にかわりもない体調を検査するなど無用のことだ。雨の魔神「テイキアーツ」のγ-GTPが高いらしい。酒を控えよ。