ワトスン君……。

なんだい。
えらく深刻そうだな。

　
　
何も言わずに
僕に4000ポンド貸してくれ！
な、何でそんな大金を。　
　 　

理由はいえない…、
しかしどうしても今日の午後までには必要なんだ！
頼む！頼むよ！
それが無いと僕はおしまいなんだ！

そうは言っても僕もそんな大金は持ってないよ。

　
　 　

なんだって！
僕にこのまま破滅しろと言うのか！

　

　
そうは言ってないけどなあ…
まあ結果的にはそうなるかな。		　
　 　

鬼！悪魔！人でなし！クナタブレ！

クナタブレ？　
　 　
ベルゼバブ！牛頭馬頭！アスモデウス！

なんだかわからないな。

　
　 　
このイナゴ野郎！犬神野郎！恐喝王ミルヴァートン野郎！
恐喝王ミルヴァートン？　
　 　

はっ！
な、なぜその名を！

この前会ったじゃないか。　
　
しっ、知らない！
僕はそんな名前はし、知らないよっ！

わかりやすいうろたえ方だなあ。
はあ、さては4000ポンドもミルヴァートンに払うつもりの金なんだな。

　
　

ち、ち、ち、ち、違うようっ！
そんなんじゃないようっ！

　
だいぶ気持ち悪いなあ。　
　
ジョージとはただの友達だようっ！
 誰だよジョージって。　

ホームズさん…ワトスンさん…

あ、ホプキンス警部…。
えらく顔色が悪いねえ。		　
　
何も言わずに8000ポンド貸してくれませんか…。
…警部もミルヴァートンに払うつもりなのか。　
　
ち、ち、ち、ち、ち、ちがいますっ！
そ、そんなそんなそんなことはないですっ！
同じようにわかりやすいなあ。
　
　

シャーロック…ワトスン君…

…久しぶりですねマイクロフトさん…
えらく顔色が悪いですが…
やっぱり…		　
　

何も言わずに12000ポンド貸してくれ…

あんたもミルヴァートンかっ！　
　

ち、ち、ち、ち、ち、ち、

 もういいよ。　
　
ホームズさーん！ワトスンさーん！

レストレード警部までか…。

　
　
醤油とお味噌を貸してくださーい！
だいぶ安いな君は。
ミルヴァートンも相手を見てものを言ってるんだなあ。		　
　
そうでーす！
ミルヴァートンに恐喝されているんでーす！
本当に困ってるのか君は。　
　

ち、ち、ち、ち、ち…。

とりあえずみんな落ち着くんだ。
どうしてミルヴァートンの恐喝をそんなに恐れているんだ。		　
　

だ、だってそれはその…。

だいたい朝にパンを食べたとか言うをばらされても痛くも痒くもないだろう？　
　
ど、どうしてそれをっ!!!!!




…そろいもそろって…。
たぶんミルヴァートンには催眠術か何かの能力があって、たいしたことが無いことでも重大な秘密だと思わせてしまう力があるんだろうな。		　
　
そうだな、そう考えるとミルヴァートンが驚異的な恐喝を行なえる理由もわかると言うものだな。
急に我に返るなよ。　
　
しかし、となるとミルヴァートンの犯罪を立証することはたいへん難しいですね。他人には恐喝が成立していないようなことで、恐喝された人は自発的にお金を払ってしまう…。
これを裁判所で犯罪だと認定させるのは困難です…

うむ、それに奴のことだ。裁判官に術をかけるぐらいのことはなんでもないだろうしな。

　
　
そして奴が屋敷で大量の血を流して倒れていた…生きてはいたものの、誰かが何かの目的で奴を殺そうとしていた…この事件の真相は…。

ほんの少し前にうろたえてた奴らとは思えない会話だなあ。

　
　
ともかく奴をこのまま野放しにしていては善良な市民達の被害が広がるばかりだ。
なんとかして奴を止めないと…
 そうですね、ミルヴァートン対策の秘密チームを作ってもらうよう、ヤード上層部に話してみます。
　
　
うむ、わしも各方面に働きかけて催眠術の専門家と連絡を取ってみよう。ひょっとしたら奴に対抗する手段が見つかるかもしれん。

ようやくまともな会話になってきたなあ。

　
　
ごはんがたけましたよー。

変わらんなあこの人は。

　
　

飯なんか食ってる場合じゃない！
行くぞ！ワトスン君！

どこに行くんだい？

　
　
ミルヴァートンの身辺を調べるんだっ！
調べてどうするんだい？
　
　

奴ほどの悪党だ。探せば一つ二つは後ろ暗いところがあるはずだ。それをなんとしても見つけ出す。
そうすれば奴を…

 奴を？　
　

逆に恐喝できる！

 そっちが目的か！　
　　

奴が人を苦しめて奪った金だ！
奴を人が苦しめて奪ってなにが悪い！

ひどい理論だなあ。　
　

まずは奴が今日の朝何を食べたか調査だ！

抜けきってないぞ催眠術！　

　

なんてことだ！まだつづくらしいぞ！

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