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そうだな、陰鬱なロンドンの気候ではとても得難い春だ。 | |
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| ロンドンの人々は公園や海などレジャーにうかれさわいでいる。 |
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この陽気だからな。
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なんだよ。 |
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どうして僕はこの薄暗い部屋の中に籠もりっきりになっていなきゃいけないんだ。
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そんなこと言ってもなあ。 |
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| 僕だって犬とともに公園を走ったり、フリスビーを投げたりして戯れたいんだ!
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びっくりするほど似合わない行動だなあ。 |
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なのに僕はこうして部屋の隅でフリスビーをかじることしかできない…。
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そっちのほうが似合っているがやめろ。
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そりゃホームズが悪いんだよ。 |
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なぜってよく思い出してみろよ。 |
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| ……たしかに人間は生まれながらにして『罪』を背負っている…それがいわゆる『原罪』と呼ばれるキリスト教の『概念』…!! |
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いや、そんなたいそうなものじゃなくて。 | |
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そう、人間はその『原罪』にとらわれて生きる、『神の囚人』なのかも知れない。だが、だが、それでも人はその「神の作った壁」の中で、どう生きるか、それが、人間の、とりうる、生き方、では、ないだ、ろうか、、、、、、
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、、が多い。 |
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なんだっけじゃないよ。まったく、それだからこんなことになってしまうんだよ。 |
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まったく、それじゃなんのために部屋に籠もっているのかわからないだろ。 |
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あのな、昨日依頼人から手紙が着いたろう。 |
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手紙を送ってきたのは首相とヨーロッパ担当相だぞ? |
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| 首相?首相というとこの時代の大英帝国では第一大蔵卿と訳すのが正しい、内閣の首班じゃないか!
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そんなことはどうでもいいんだよ。 |
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どうでもいいとはなんだ!イギリスの内閣制度は他国の内閣制度のさきがけでありながら、他国とは違った特徴を持つんだ!首相が正式に設置されたのは1937年になってからなんだぞ!
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で、その首相の手紙の内容だが、覚えてるかい? |
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| うーん…。たしか何か人形のような暗号が躍っていたような…。 |
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全然違う。 |
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なんだ君は!僕のいうことをすぐに否定して!否定からは何も生まれないぞ!生まれるのはヒテイザウルスだけだ!鳥盤目装盾亜科剣竜下目の!
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ある外交機密に関する重要な文書が無くなったので、それを探して欲しいということで。
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| その機密とはある海軍に関する秘密協定…そうだったな。 |
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いや、全然違う。とある王族の結婚問題。
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うん。
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| いい加減なことばかり言いやがって!よしわかった!君と僕の記憶のどちらが正しいか、賭けてみるか!
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いいよ。 |
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| ふっ、首相からの手紙を見てほえ面かくなよ。えーと、手紙手紙手紙… |
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無いよ。 |
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今朝お茶を飲もうとしてただろう。 |
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うむ、いいスコーンが手に入ったのでな。やはりイギリス人の朝は紅茶とスコーンだよ。
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で、君が二個目のマフィンに手を伸ばそうとした時だ…
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紅茶のカップに手があたって倒れた。
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君の手がだよ。
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まったく見苦しいな、自分の失敗を他人に押しつけるなんて。
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その時紅茶が手紙にかかってしみができた…。 | |
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それで、急いでふくものを探している時に君がすっ転んでテーブルの上もめちゃくちゃになって
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| 失敗は恥ではないよ、それを次に生かせないことが恥なのだよワトスン君。 |
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そしてそのせいで手紙がどこかに行ってしまったんだ。
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| なるほど、だから部屋がこんなにしっちゃかめっちゃかになっているのだな。 |
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わかったらさっさと探せ。
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やれやれ、まったく頭脳派の僕がこんな仕事をしなくてはならないとはね…。
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国家機密なんだからうかつに他人に見つけられるわけにも行かないだろう。 |
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なに、安心したまえ。僕の推理で手紙がどこに行ったかすぐ見つけてみせるよ。
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この部屋にあることは僕でもわかるが。 |
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| 君の頭脳ではそんなものだろうがな、僕の頭脳…特に今は飛び抜けてすっきりとした頭脳ならば、いちいち体を動かさなくてもすぐ見つかるというものだよ。 |
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いやさっきまでの言動からみてどうかと。! |
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げっ! |
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| うわああ後頭部がぱっくりと割れええええ!! |
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