「そーれそれそれ集まりだー。」
「まず何の集まりかはっきりしてください。」
「フランスのアビニョンで、ある女性の画家が同じく画家であるサイ・トゥオンブリ氏から訴えられているそうです。」
「アビニョンで展示されていたサイ・トゥオンブリ氏の絵画にキスマークをつけたとして訴えられているのです。」
「なんでまたそんなことを。」
「この女性画家の方は『作品に対する愛』を表現したということなんですが。」
「トゥオンブリ氏側は『愛には両者の合意が必要なはずだ』とあくまで愛を認めない方針。」
「どっちかというとストーカーに近い愛ですね。」
「またこの絵画の価格も3億円はするというものだったのです。」
「このような美術品が個人によって傷つけられる行為というのは結構ありまして。」
「そうなんですか。」
「かつてはミケランジェロのダビデ像やピエタ像、最近ではモネの絵画が酔っぱらいによって傷つけられたそうです。」
「金閣寺とかもそうでしたか。」
「ちなみにモネの事件では女性画家が『あれは愛じゃない』と非難しているとか。」
「まあ愛の問題じゃないと思いますが。」
「こういうことがあると芸術家側も考えないといけないですね。」
「なにをですか。」
「どんな攻撃でも破壊されない美術品を作る必要があるのです。」
「たとえば絵画ならどんな攻撃を受けても汚れたり破れたりしないキャンバス。」
「どんなものにでも描ける絵の具で描けばいいじゃないですか。」
「…矛盾って知ってますか。」
「知ってます。」
「同様に彫刻はどんな攻撃でも壊れない素材を、どんなものでも削れるノミで彫ればよいのです。」
「知識がまったく身になっていないですね。」
「しかし、現実にはそういう材料を手に入れるのは難しい点もあると思います。」
「難しいというか不可能です。」
「そういうことなので、芸術家はもっと違ったアプローチをとる必要があるかも知れません。」
「そりゃそうです。」
「その破壊する人は、破壊しようと思ったから破壊しようとするのです。」
「そりゃそうです。」
「ですから破壊する人に破壊させる気を起こさせなければ良いわけです。」
「しかし破壊する動機も愛とか嫉妬とか様々ですが。」
「ですが、それらには共通点があります。」
「それは、作品を目の前にして出てきた感情であるということです。」
「はあ。」
「だから、目の前にしても何の感情も起こらない芸術作品を作ればいいんです。」
「それは芸術作品と言えるのか。」
「そうなれば美術館に『へー。』『ふーん。』『で？』などの声が響き渡るように！」
10月12日、厳密に言うと少し感情が動いているので良くない。
