「盗んだバイクでアペリティフ♪」
「窃盗の上に飲酒運転ですか。」
「JR東日本の奥羽線を走る列車に「かもしか」と言うのがあるのですが。」
「そのヘッドマークの絵が、かもしかではなくエゾシカだという指摘が寄せられたそうです。」
「あらら。」
「たしかにカモシカとエゾシカは名前こそはシカがつきますが、別の生き物ですから。」
「しかし、JR東日本は、今回の指摘を受けても訂正しないことを決めたそうです。」
「なんでまた。」
「イラストはあくまでスピードなどを意識したものなので、変えるつもりはないのだそうです。」
「しかし、そういう細かいところの違いは乗客としては気になるところです。」
「別にいいんじゃないですか。」
「そうでしょうか。」
「そんな細かいところは気にしませんよ。」
「では大阪行きの電車に乗ったのにもかかわらず、ヘッドマークに『サウスダコタ行き』と書かれていても気にならないと？」
「いやそれは気にならざるをえないですが。」
「実質とイメージがかけ離れているということは、さほどかように人を不安にさせるのです。」
「そんなに深いイメージかなあ。」
「同じように特急「ごみむし」に乗っているのに、ヘッドマークが「ゴミムシダマシ」だったらどんなに不快でしょうか。」
「特急「山田康雄」に乗っているのに、ヘッドマークが「栗田貫一」ならどんな気持ちでしょうか。」
「ですので、JR東日本の方にはぜひ違和感がなくなるような計画を立てていただきたい。」
「なくなりますかねえ。」
「まずヘッドマークをたくさん用意します。」
「いえ、一枚一枚微妙に違います。」
「ちがう？」
「それを横一列にずらっと並べます。」
「はあ。」
「その、カモシカからエゾシカに徐々に進化していく図をみて、カモシカもエゾシカも同じ仲間だ、と納得できるのです。」
「そんな進化体系に納得しないでください」
「安心の基準がまったくわからん。」
「食品の賞味期限偽装が話題になった一年でしたが。」
「いろいろありましたねえ。」
「東洋インキが書き替え不可能な賞味期限表示の印刷方法を開発したそうです。」
「ずいぶんとタイムリーな発明ですね。」
「包装紙やシールの上に印字するのではなくて、透明なフィルムにくるまれた包装材にレーザーをあて、文字を浮かび上がらせるのです。こうすれば上から書き直すことは出来ません。」
「しかしこの方法も、包装ごと取り替えられると無意味です。」
「それはまあしかたないですね。」
「ですから包装を取り替えられない工夫として。」
「そこまで考えましたか。」
「賞味期限が来るまで絶対に開かない、タイムカプセル包装機能を！」
12月14日、森川由加里。
