「としのはじめの元ちとせ。」
「それははじめをむかえることもあるでしょうが。」
「エクアドルにコレア大統領という人がいるのですが。」
「先日、サウジアラビアのアブドラ国王が大統領夫人に宝石を贈ったのですが、それをオークションにかけることを発表したそうです。」
「いいんですか贈り物を売って。」
「売った代金は国庫に納入します。エクアドルの大統領として受け取ったのだから、その地位への贈り物はエクアドル国民に還元しなければならないという考え方です。」
「しかし、これには問題もあるわけでして。」
「何が問題ですか。」
「これが宝石だから売ることができるのですが、他のものだったらどうでしょうか。」
「何ですか他のものって。」
「たとえば国家元首という仕事をしていると様々な人と会わねばなりません。」
「まあそうですね。」
「時には、ミスりんごから表敬訪問を受けることがあるでしょう。」
「エクアドルにミスりんごはいるんですか。」
「するとミスりんごからりんごが贈られます。」
「まあミスりんごですから。」
「しかし、このりんごをオークションにかけるわけにもいきません。」
「りんごですから。」
「そうすると、りんごを大統領はおいしくいただくほかありません。」
「するとサウジの国王はどう思うでしょうか。自分のものは売り払われたのに、ミスりんごのリンゴはおいしくいただくのか、エクアドルはサウジアラビアよりミスりんごが大事なのか。」
「いやそこまで思いますか。」
「エクアドル国民もどう思うでしょうか。宝石の代金は国庫に納入したかも知れないが、りんごは私物化した。ミスりんごと何か癒着しているのではないか。」
「いやそこまで思いますか。」
「こうして外交、内政とともにぎくしゃくした関係になるかも知れないと言うことが危惧されているのです。」
「ですから、こうした贈り物は一括して同じ措置が執られるようにするほかないのです。」
「どうするんですか。」
「すべてを同じ扱いにするにはこれしかありません。」
「なんですか。」
「鍋です。」
「鍋？」
「おいしくいただけそうなものがひとつもありませんが。」
「そうすれば、やがて贈る側も考えるようになって、勲章を鶏肉で作ったり、花束を豆腐で作ったりしてくれるでしょう。」
「気を遣わせるなよ。」
「これほど国内外に影響を与えられる政治家がかつていたでしょうか。」
「たいへんめんどくさいだけの影響ですが。」
「そんな批判をする新聞なども鍋にしておいしく食べてしまいます。」
「そんな批判の声も煮込んでしまうのです。」
「漠然と煮込むなよ。」
「そしてその何でもかんでも煮込んだ鍋の汁を飲む姿を見て、人は彼のことを『清濁併せ呑む、度量のある政治家』として評価するでしょう。」
「もっと他に持っていてほしい要素はありますが。」
「そして人は彼のことをこう呼ぶでしょう、鍋大統領と！」
12月28日、よく言ったナベ。
