世間のとっさの事態の中でも、特にとっさ度が高いのが、逮捕の瞬間です。現行犯逮捕の時はもちろん、令状をとった逮捕の際でも緊迫したムードに包まれます。
そんな緊迫した事態で作る事の出来る料理が冷や奴です。
- 材料
- ねぎ … 適量
- 醤油 … 適量
- 豆腐 … 2丁
- 生姜(お好みで)… 適量
- はちみつ … 大さじ3杯
- 豆腐を食べやすい大きさに切り、水気を切って、皿の上に置きます。包丁を使って切ると切りやすいですが、場合が場合なので包丁を持ち出すと事が面倒です。下敷きや、逮捕令状など、危なくないものをうまく使って豆腐を切りましょう。
- ネギをきざみます。ねぎは下敷きなどではきざめないので、手で引きちぎります。はさみでも切ることは出来ますが、はさみも危険だと思われがちです。できるならば、はさみのすばらしさを警察の方に語り、わかってもらえるようにしましょう。
- 生姜をおろします。おろし器ぐらいなら使っても大丈夫でしょう。わかってもらえない場合は、 警察手帳の桜の代紋の部分がおろし金に適しています。
- 豆腐にネギと生姜をのせ、醤油をかければできあがりです。
冷や奴は嫌う人も余りおらず、手早くできるので、警察の方を待たせることはありません。きっと警察の方も喜ぶことでしょう。
また、アメリカで逮捕される場合には、警官の方にミランダ警告と呼ばれる警告を行われます。
ミランダ警告とは、被疑者の権利を被疑者に対して説明するもので、黙秘権や供述の取り扱い、弁護士を呼ぶ権利について述べられるものです。アメリカの警察では、逮捕の際には必ず行われるものです。この時間を使って、冷や奴だけではなく、湯豆腐に挑戦してみるのもいいでしょう。アメリカでも豆腐は健康食として大人気です。警官の方も、ドーナツとコーヒーをほおばるのをやめて、豆腐に手を伸ばしてくれるでしょう。
娘さんを僕にください。何という傲慢な言葉でしょうか。突然やってきて、手塩に掛けた娘を、さも物のようにくれと請求するのです。全くどこの馬の骨でしょうか。けれども、そういった面を表に出しすぎると、娘や妻が後で怒ります。なんということなのでしょうか。どうして娘や妻はあんなにトゲのついたバットで私に襲いかかるのでしょうか。ですから、なんとしてもその場は穏便に、けれども父親としての威厳を保つとっさの料理が求められます。
- 材料
- 馬肉 … 20キログラム
- 日本刀 … 一振り(無ければ西洋刀でも可)
- ポン酢 … 適量
- ニンニク … 52グラム
- 生姜 … 53グラム
- ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ … 適量
- 馬肉はロープにくくりつけ、天井からつるしておきます。
- 男がやってきたところを見計らい、肉にパンチを数十発撃ち込みます。これで肉が軟らかくなるとかいうことはありませんが、男はあなたの体力に恐れをなすことでしょう。なお、馬肉が傷まないように、部屋はマイナス4度程度に冷やしておきましょう。
- 「娘さんを僕にください」と言った頃を見計らい、おもむろに日本刀を取り出します。なお、男が警察関係者だった場合などを考えて、刀剣所持許可状は手の届くところに置いておきましょう。
- 刀で馬肉を思い切り切り刻みます。馬肉は肉目にそってきるとおいしく食べられます。
- 薬味となるニンニクや生姜をすり下ろします。男が警察関係者だった場合は、警察手帳の桜の代紋を使っておろすことも出来ます。
- 通常はここでできあがりですが、娘さんが料理に自信がないという時には、ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマをふりかけておきましょう。味覚障害という味がわからなくなる病気の原因の一つとして、亜鉛の欠乏があります。亜鉛は牡蠣に多く含まれています。そんな牡蠣の養殖に大被害を与える赤潮の原因プランクトン、ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマを振りかけておくことで、少しでも男の中の亜鉛を減らせたという、現実的ではないけれども大きな満足を得ることが出来ます。
馬刺しは、競馬関係者などの馬を扱う職業の方と、生物が苦手な方と、生肉が苦手な方以外には好まれる料理です。そんな馬刺しをチョイスするあなたの度量に、男はただひれ伏すばかりでしょう。あとは事前にトゲのついたバットを隠しておけば完璧です。
とっさの事態といえば、はちあわせです。
浮気をしてしまう行為は決して許されないことです。しかし、時には太陽が余りにも眩しく、革命運動のために必要な行為であることもあります。
なんとかこの場を切りぬけなければなりません。そんな時にとっさの料理で二人におもてなしをしましょう。
- 材料
- うなぎ … 三尾
- 包丁 … 一丁
- みりん … 314cc
- 酒 … 25000cc
- 醤油 … 372cc
- 砂糖 … 240g
- 山椒 … お好みで
- 米 … 5合
- うなぎをさばきます。うなぎは、関東では背開き、関西では腹開きといいますが、この場合はどちらでもいいです。お二人が関西と関東の出身に別れている場合は、切りにくいですが脇から切りましょう。なお、うなぎをさばいた後も包丁を手放さないようにしましょう。
- 酒を煮きります。大鍋に日本酒を入れて、アルコール分を飛ばします。部屋の空気にアルコール分が大量に混じり、二人が泥酔すればしめたものですが、かえって大変なことになるかも知れません。お酒が300cc程度に減ってきたら、みりんを合わせて煮きります。
- 一旦火を止めて、鍋に砂糖を入れて溶かします。砂糖が溶けたら醤油を入れて沸騰させます。その後、弱火にして20分ほど煮詰めます。
- この間にご飯を炊いておきます。
- うなぎをたれにつけて焼きます。とっさの事態なので、炭火というわけにはいきません。ガス火で焼く際は遠火でじっくりと焼きましょう。時々たれを塗って味を浸透させます。
- 焼き上がったら、ご飯の上にのせてできあがりです。お好みで山椒をかけましょう。この時、二人に山椒を渡してあげるのは、どちらが先かなどともめて危険ですので、やめておきましょう。
料理をする時には集中力が必要です。そこで、料理に集中することで、この気まずい雰囲気を一瞬でも忘れることが出来ます。そして、ご飯をたくさん炊いて、もりもりと食べるたくましい男だということを見せつけましょう。「こんな時によく食べられるね」という視線に耐えることが出来れば、あなたはひととしてまた少し成長することになります。また、ふたりが江戸黄表紙に詳しければ、山東京伝作「江戸生艶気蒲焼」(えどうまれうわきのかばやき)にかけたものだとわかってもらえるはずです。わかってもらえたからと言ってどうなるものでもありませんが、とにかく世の中とはそうしたものであることは確かです。