双葉博士 |
いかがでしょうか、この怪人は。 |
望月委員 |
わりと小型ですね。 |
双葉博士 |
やはり、量産化の後に配属される交番の環境を考えますと、小型にしておくのがよいと思いまして。 |
獅子ヶ島委員 |
まあ軽薄短小の時代だからね。 |
高橋委員 |
ちょっとその時代認識は古いんじゃないんですか。 |
望月委員 |
これだけ小さくて性能のほうは大丈夫なんですか。 |
双葉博士 |
その点は大丈夫です。先日の渋谷区連続金物店襲撃事件の犯人怪人であるダークカナダライの1.2倍の力を持っています。 |
獅子ヶ島委員 |
でも力だけじゃ困るねえ。 前に試験導入した怪人、ドライメジロだっけ? あれなんかパワーは強いけど動きがとろくてさ、犯人じゃなくてパトカー4台も破壊しちゃったねえ。あの怪人今何してるんだ? |
高橋委員 |
農林水産省の日本漬物研究所でぬか味噌漬けの研究の助手をしているとか。 |
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まあ漬物好きでよかったよ。 |
双葉博士 |
何かご質問などはありますか。 |
獅子ヶ島委員 |
まあねえ、サンタクロースはいいんだけどね、それだと12月ぐらいしか働けないんじゃないかね。 |
双葉博士 |
いえ、最近ではクリスマス商戦はもう10月頃から始まってますし。 |
獅子ヶ島委員 |
それでも三ヶ月だ(笑) |
望月委員 |
まあ街に溶け込むという迷彩効果はちょっと冬場以外の季節には期待できませんね。 |
双葉博士 |
そ、そんなことないです。コスプレの一環としてサンタクロースもありだと思いますし。 |
獅子ヶ島委員 |
ありかね。 |
高橋委員 |
さあ。 |
双葉博士 |
私は大丈夫です。 |
高橋委員 |
何がですか。 |
望月委員 |
ちょっと教育的見地からも質問があるんですが、この怪人は街の中での対怪人戦闘を主任務とするわけですね。 |
双葉博士 |
はい、そういう用途のためのものですから。 |
望月委員 |
そうなるとサンタクロースが怪人と様々な体液や液体を撒き散らしながら戦うわけですね。ちょっと子供たちには見せられない光景じゃないですか。 |
双葉博士 |
私は少々液体のかかったプレゼントでも平気です。 |
獅子ヶ島委員 |
そういう問題じゃないだろう(笑) |
望月委員 |
それに万一サンタクロースが負けたりした光景が見られたりするのも。 |
双葉博士 |
ヒヨコサンタは負けませんっ!普通の怪人の1.2倍のパワーですよ! |
獅子ヶ島委員 |
怪人が2人なら負けるだろう。 |
望月委員 |
そういう計算になりますね。 |
双葉博士 |
ちょっとその計算は乱暴すぎやしませんか。 |
望月委員 |
あと、これはちょっと瑣末な問題かもしれませんが。 |
双葉博士 |
なんですか。 |
望月委員 |
こちらの資料に「ヒヨコ」と「サンタクロース」の合成人間と書かれていますが。 |
双葉博士 |
はい。 |
望月委員 |
「サンタクロース」はどこから調達されたんですか? |
双葉博士 |
…それはちょっと今の段階では申し上げるわけには行きません。 |
獅子ヶ島委員 |
だいたいサンタクロースって本当にいるのかね。 |
双葉博士 |
なんてこと言うんですか!子供たちの夢を壊すつもりですか! |
望月委員 |
納入先を公開していただかないと、量産体制に入るのは不可能ですし。 |
双葉博士 |
…まあ、そのあたりは、還暦老人と大黒天の合成人間を作ればサンタクロースになりますので、実際の量産体制には問題ないと思います。 |
獅子ヶ島委員 |
合成工程が多くなるとコストの問題がでてくるねえ。 |
高橋委員 |
そもそも大黒天はどうやって調達するんですか。 |
双葉博士 |
……。 |