双葉博士 |
あーやだやだ。早く帰りたい…。 |
高橋委員 |
どうかしましたか。 |
双葉博士 |
どうかしましたかじゃないでしょうが。 |
高橋委員 |
そんなにくさやと納豆と鮒寿司が合わさった怪人と一緒に暮らすのは苦痛ですか。
|
双葉博士 |
わかってんじゃないのよっ! |
高橋委員 |
まあつらいとは思いますけどね。 |
双葉博士 |
わかるわけないでしょっ!どんだけ臭いとおもってんのよっ! 隣の部屋のスウェーデン人が気絶したのよっ! |
高橋委員 |
あの腐った缶詰を食べるスウェーデン人が倒れるというのは相当ですね。 |
レムミ助手 |
と、同時にそれに耐え抜いた博士の臭いへの耐性も大きくクローズアップされてしかるべきだと思いまっす。 |
高橋委員 |
そうですね、今でもずいぶん臭いですし。 |
|
えっ。 |
高橋委員 |
あと三歩ほど近づかれたら殴ってしまうかも知れません。 |
双葉博士 |
そ、そんな他人に害意を抱かせるほどにおいがうつって。 |
レムミ助手 |
殴る時には棒などを使ったほうが臭いがうつらなくていいです。 |
高橋委員 |
でもあなたは臭くないですね。 |
レムミ助手 |
それは私には消臭機能がついているからでっす。 |
高橋委員 |
何のためにつけたかはよくわかりませんが、とにかくそれが役に立ったわけですね。 |
双葉博士 |
レ、レムミっ!あたしの臭いも消してっ!早くっ! |
レムミ助手 |
ではおもむろにぶすり。 |
双葉博士 |
はぎゃっ! |
レムミ助手 |
この高機能消臭剤を血管に流し込むことで物理的に強制的に臭いを消し去る仕組みでっす。 |
双葉博士 |
はぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ。 |
高橋委員 |
だいぶけいれんしてますが大丈夫ですか。 |
レムミ助手 |
だめだった場合でも自分の発明品が死因となるのだから悔いはないのだと思いまっす。 |
高橋委員 |
芸人が板の上で死にたいというのとはずいぶん違う気がしますけど。 |
ジャン博士 |
ノンノンノンノン!何だねこのホテルは!豆や米や魚が腐ったようなにおいがするじゃないか! |
高橋委員 |
これでもずいぶんましになったほうなんですけどね。 |
ジャン博士 |
オウ、ジャポネのマドモアゼール。その妙に臭って大きい携帯電話に着信が入っていマースよ。 |
双葉博士 |
はぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!はぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ! |
高橋委員 |
これは携帯電話ではなく、とてもそうは見えないかもしれませんが、日本の博士です。 |
ジャン博士 |
オーウ…博士…ということは怪人の…? |
高橋委員 |
ええ。ということはあなたも? |
ジャン博士 |
これは申し遅れましーた。私フランスの怪人博士ジャン=マリア・クレーヌ・ド・シュヴァリエと申しマース。 |
高橋委員 |
シュヴァリエ博士!こちらこそ失礼しました。私は日本の厚生労働省治安用怪人審査委員の高橋と申します。 |
レムミ助手 |
このフランス人はえらい人でっすか高橋さん。 |
高橋委員 |
EUの怪人界の最高賞であるル・ディモン=ザルツブルク賞を2年連続受賞した、ヨーロッパ怪人界でも三本の指にはいるとされる天才よ。 |
レムミ助手 |
ということはうちの博士とくらべると。 |
双葉博士 |
はぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ はぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ |
高橋委員 |
さすがに、人としてそこまで残酷になるのはどうかと思うけど。 |
ジャン博士 |
おや電話中ですか失礼。 |
レムミ助手 |
もう携帯電話と言うことでいいでっす。 |
ジャン博士 |
ともかく日本の怪人を見せてもらうのをたのしみにしてますよ。アデュー。 |
レムミ助手 |
あれ。 |
高橋委員 |
あれ? |
レムミ助手 |
高橋さん高橋さん、ヨーロッパでも三本の指に入る天才の博士が、このやっすい、ふなとこめとまめが腐ったにおいがするホテルにチェックインしようとしてまっす。 |
高橋委員 |
本当だ。エレベーターもないから階段で部屋まで上がらなきゃならないホテルの階段で、必死にスーツケースを引っ張り上げている。 |
レムミ助手 |
あ、倒れまっした。 |
高橋委員 |
ちょうどあの高さまで臭いが充満してるのね。 |