双葉博士 |
えー、カレーカレーカレー。カレーはいらんかねー。 |
レムミ助手 |
カレーでっす。 |
双葉博士 |
あまくておいしい、ほかほかのカレーはいりませんかー。 |
高橋委員 |
あ。双葉博士。…何やってるんですか。 |
双葉博士 |
あー高橋さん、カレーいりませんかカレー。 |
高橋委員 |
カレー…って、どうしてこんな道ばたでカレーを売り歩いてるんですか。 |
双葉博士 |
あー、ほら、アイスランドではカレーを売ってる人がいないじゃないですか、だから。 |
レムミ助手 |
というまったく非合理的な主張による、変装の一種でっす。 |
高橋委員 |
変装? |
双葉博士 |
しっ!レムミっ!!そんなこと言ったらあたし達が密命を帯びて、テロリストから国際会議を護るために暗躍しているってことが、高橋さんにばれちゃうでしょうがッ!! |
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基本的に向いてないですね、秘密に。 |
双葉博士 |
えー、カレー、カレー。 |
高橋委員 |
まあいいですよ。獅子ヶ島さんから話は聞いてますから。 |
双葉博士 |
なんだ知ってたんですか。 |
レムミ助手 |
じゃあどうぞカレー。 |
高橋委員 |
変装するにしても、もうちょっと他のものがあったでしょう。 |
双葉博士 |
いやいや、高橋さんは、こういうことに関しては素人だから。 |
高橋委員 |
プロなんですか、博士。 |
双葉博士 |
いいですか、国際会議の会場には無数の人が出入りするんですよ。そこでずっと一カ所にいて、一番怪しまれない方法。それが露店です。 |
高橋委員 |
まあたしかに、今回の国際会議は、エキシビジョンなどもあってたくさんの人が出入りしますけどね。でも大丈夫なんですか。 |
双葉博士 |
何がですか。 |
レムミ助手 |
そのへんの事情は、さっき渡したカレーをいっこうに食べようとしないあたりにあらわれていまっす。 |
双葉博士 |
やだなあ、高橋さん。おいしいですよ、甘くて。 |
高橋委員 |
その価値観が不安なんですけど。 |
双葉博士 |
やだなあ、カレーにだけは自信があるんですよ。自信が。 |
高橋委員 |
それに、カレーの屋台なんて日本でも見ないのに、アイスランドにあったらなお不自然でしょうし。 |
双葉博士 |
だってカレーと言えば、寿司、テンプラ、オムライス、お子様ランチと並ぶ代表的な日本料理ですよ。 |
高橋委員 |
なんで二つもケチャップライスが入ってるんですか。 |
レムミ助手 |
危惧を抱かれるのはもっともでっす。 |
高橋委員 |
誰か味見した人はいるの? |
レムミ助手 |
評判は上々でっす。 |
高橋委員 |
誰が味見したの? |
レムミ助手 |
主に博士と通りすがりのイギリス人とアメリカ人達でっす。 |
高橋委員 |
……。 |
獅子ヶ島委員 |
よう(笑)双葉博士。保健所の許可が下りたよ()。 |
高橋委員 |
あ、獅子ヶ島さん。食べます? |
獅子ヶ島委員 |
やあ高橋君…君は食べたのかね。 |
高橋委員 |
……。 |
獅子ヶ島委員 |
……。 |
双葉博士 |
ちょっとっ!いいかげんにしてくださいよっ!!どーしてそこまで人を信じられないんですかっ! |
高橋委員 |
いや、人というか…。 |
獅子ヶ島委員 |
博士自体をだね… |
双葉博士 |
いいですもうっ!見ててくださいよっ!国際会議の日には、大行列をつくってみせますからっ! |
獅子ヶ島委員 |
ちょっと、何のためのカレー屋か忘れてないかね(笑) |
双葉博士 |
あれ? |
高橋委員 |
どうかしました? |
双葉博士 |
ここにあったはずのカレーの鍋が…。あれ? |
レムミ助手 |
博士、あそこでアリに運ばれているのがそうと思われまっす。 |