高橋委員 |
それではただいまより審査を始めます。 |
双葉博士 |
あの、その前にちょっと聞きたいことがあるんですが。 |
獅子ヶ島委員 |
なんだね。 |
双葉博士 |
来年度から怪人の導入試験方法が変更されるらしいですね。 国の決めた計画書どおりの仕様の怪人を博士に開発させるって。 それは大問題ですよ。 |
レムミ助手 |
「そういった政策の変更は博士の自主性を損ない、博士のモチベーションを著しく低下させ、自主性を持って行動する悪の博士のモチベーション相対的にあげ、結果的に治安用怪人計画自体の崩壊を招くものである。また、博士の研究の自由を定めた博士研究基本法に抵触するおそれもある。よってそのような計画は白紙撤回するべきである」 |
望月委員 |
ああ、その話ですか。それでしたら与党の一部でそういう意見もありましたが、法案提出は見送られたそうです。 |
双葉博士 |
本当ですか!ああよかった。 |
獅子ヶ島委員 |
まあ今の首相も全博協(※注)が支持団体だしねえ。(笑) |
(注)全博協…全国博士協議会の略。博士の相互扶助と親睦を目的とした団体。本部岐阜県高山市。 | |
高橋委員 |
困ったものですね。 |
|
…高橋さんは賛成派ですか。 |
高橋委員 |
いえ、ただそういうことになれば怪人の導入が能率的でスムーズに行くだろうなと思っているだけです。 |
獅子ヶ島委員 |
今の四倍ぐらいは導入できるなあ。おっと、ゼロを何倍しても増えないか。(笑) |
双葉博士 |
数だけ増やしても仕方ないと思いますけど。 |
高橋委員 |
では、質のよい怪人の説明をよろしくお願いいたします。 |
双葉博士 |
…はい、ではこの怪人は龍人アメリカトウシンガエルといいまして… |
望月委員 |
龍、ですか。見たところ龍には見えませんが。 |
双葉博士 |
中国では龍というのは優れた人というものの象徴なのだそうです。つまりそれほど優れた怪人だと。 |
獅子ヶ島委員 |
たいした自信だねえ(笑)。 |
高橋委員 |
では、その自信の根拠をみせていただけますか。 |
双葉博士 |
皆さん、蛍の光という歌をご存知ですか。 |
望月委員 |
あの、卒業式で歌う歌の。 |
獅子ヶ島委員 |
原曲はスコットランド民謡の。 |
高橋委員 |
スコットランドでは酒を飲みながら陽気に歌うという蛍の光ですか。 |
双葉博士 |
…そうです。あの歌というのは、貧しさに耐えて勉強するという歌詞なんですが。 |
獅子ヶ島委員 |
スコットランドでは違うけどねえ(笑) |
双葉博士 |
……この話は昔の中国の東晋時代の政治家、車胤と孫康の若き日の逸話なんだそうです。貧しくて油の買えなかった車胤は、夜も勉強するために蛍を集めて明かりとして、同じく孫康はカエルを集めて明かりとしたそうです。 |
望月委員 |
窓の雪、じゃなかったですか。 |
双葉博士 |
私はそう聞きましたけど。 |
高橋委員 |
耳も悪いんですか。 |
レムミ助手 |
耳はいいよ。 |
獅子ヶ島委員 |
まず、光るカエルって言うのも知らないねえ。 |
望月委員 |
1999年に遺伝子操作で光るカエルが作られましたが、天然のカエルで光るものは存在していません。 |
双葉博士 |
私は歌詞の分析から、当時の中国のカエルには光るものがいたと思って研究を始めました。魚に発光生物は多く見られます。したがって両生類も光ってもおかしくはない、なぜ今はいないか。それは四つ足のものはテーブルとこたつ以外のものは全て食べるという中国人によって食べつくされてしまったのではないかと考えました。そこで、中国のカエルを分析し、遺伝子操作で当時の光るカエルを再現したのです。それがトウシンガエルです。 |
高橋委員 |
出発点から間違ってますねえ。 |
レムミ助手 |
行為も方法論も全て間違ってるね。 |
獅子ヶ島委員 |
で、そのカエルがどうやって敵の怪人を倒すんだね。 |
双葉博士 |
そこが、この怪人の最大の特徴です!ほかの怪人と違ってこの怪人は、自分の力で敵を倒したりはしないのです! |
望月委員 |
どういうことでしょうか。 |
双葉博士 |
アメリカの発明王エジソンをご存知でしょうか。 |
望月委員 |
あの、電球を発明した。 |
獅子ヶ島委員 |
蓄音機を発明した。 |
高橋委員 |
霊界交信機は発明できなかった。 |
双葉博士 |
そう、そのエジソンの発明した電球!皆さんご存知でしょうか! 古くから伝わる漫画という書物に何かを思いついたときに、その人の頭に電球が出るのをっ! 私はその原理を応用し、この怪人に電球を投げさせ、周りの人に怪人退治のアイデアをひらめいてもらうのです! |
レムミ助手 |
ここのところ疲れがたまってるらしいんで、ほんとにごめんね。 |
高橋委員 |
そう信じたいところですね。 |